ウェブスター・カレッジで 「映画・音楽・ジャズ」

映画も専攻していたゾーンは映画音楽への関心も高く、イタリア人作曲家エンニオ・モリコーネの書いた映画音楽へのオマージュ作品『ザ・ビッグ・ガン・ダウン』・1984~85など、この方面でも精力的に活動し、一連の映画音楽作品「フィルム・ワークス」を発表する。

またジャズ・レコード・コレクターとして大量のLPを所有するゾーンは、過去のジャズマンにも強い関心を示し、50年代から60年代にかけ活躍したケニー・ドーハムKenny Dorham・1924―72、トランペット、ハンク・モブレーHank Mobley・1930―86、テナー・サックス、ソニー・クラークらの作曲した作品を現代的感覚で再演したアルバム『ニュース・フォー・ルル』を録音。

89年にはアルト・サックス奏者オーネット・コールマンの作品を驚異的なスピードで演奏したアルバム『スパイ vs. スパイ』を録音する。

同年、ギター奏者ビル・フリゼール、キーボード奏者ウェイン・ホービッツWayne Horvitz・1955― 、ドラム奏者ジョーイ・バロンJoey Baron・1955― そしてベースをフリスが担当するグループ「ネイキッド・シティ」を結成。

90年、ゲストにボーカルの山塚アイ・1964― を加えたアルバム『ネイキッド・シティ』を録音。93年、ナチスによるユダヤ人襲撃事件をテーマとしたアルバム『クリスタルナハト』で、ゾーンは初めてユダヤ人としての自らの出自を正面から取り上げた。

翌94年トランペット奏者デーブ・ダグラスDave Douglas・1963― 、ベース奏者グレッグ・コーエンGreg Cohen、バロンをサイドマンとするグループ「マサダ」を結成。このグループ名は、ユダヤ民族の象徴ともいえる「マサダの砦」にちなんでいる。

同年アルバム『マサダ1』を発表、ジューイッシュ・メロディとコールマン的な方法論を巧みに融合させる。

ゾーンの非常に多岐にわたる音楽をひとことで総括するのは困難だが、彼の活動の主軸が10枚を超える「マサダ・シリーズ」であることを考えると、彼が民族的アイデンティティを主要なテーマとしていることは疑いない。
update:2010年02月25日